おとがわプロジェクト

よりよいまちへの「引き継ぎ」とその「架け橋」を

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NYの「戦略/戦術」を通して岡崎の公共空間活用を考える。中島直人+藤村龍至シンポジウム「歩きたくなるストリートのつくり方」レポート

2017年1月23日は、ニューヨーク(以下:NY)の公共空間について調査されている東京大学大学院 工学系研究科 都市工学専攻の中島直人さんをゲストに迎え、シンポジウム「中島直人+藤村龍至 歩きたくなるストリートのつくり方」が、りぶらホールで行なわれました。

フライヤーにある通り、「ニューヨーク市はブルームバーグ市長のもと、マンハッタン東側を流れるイースト・リバーを戦略軸に据え、歩行者を中心に据えた公共空間を整備し再生したことで知られている。 岡崎市の乙川リバーフロント地区を「歩いて楽しく、自転車で回れて、車でもきやすいまち(QURUWA戦略)」に変えていくために、ニューヨークの戦略を紹介、討議します。」という内容。

まず中島さんさんから「ストリート」という言葉を「道路」に限定せず、広く「エリア」として捉えている、と前提共有があり、基調講演がスタート。そこでポイントになったのは以下の3点です。

 

中島直人さん
中島直人さん

 

1:NYはどんなところか
2:「公共空間の大転換」のポイント
3:「公共空間の大転換」の事例

 

1:NYはどんなところか

—近代都市インフラの「公共空間化」

人口841万人(東京23区906万人) 、面積1214㎢(東京23区621㎢) 、名目GDP643.2億ドル(東京都85兆2000億円)というNY。この都市における近代都市インフラの「公共空間化」という「大転換」を、ハイラインブルックリン・ブリッジ・パーク、そしてタイムズ・スクエアという3つの事例から見ていきました。

ハイライン
当時、貨物線の線路が廃線となり使われていなかった場所を、1991年、2人の住民が声をあげ、散歩道となった事例。周りより10m以上高いため見晴らしが良く、線路に対して店舗が背を向いていたが、歩道向きに整備し直されています。

 

ハイラインを説明する中島さん
ハイラインを説明する中島さん

 

ブルックリン・ブリッジ・パーク
ブルックリンにあるイースト川沿いにある公園。かつてこの場所一帯は工場があり、誰も入ることができない場所だったのが、マンハッタンのビル群を見ることができる公園になっている。アクティビティが生まれるようにスポーツ施設も置かれている。パーク内には賃貸物件があり、そこでの賃料を公園の整備費に当てているそう。

タイムズ・スクエア
ブロードウェイミュージカルのある観光地。 交差点が複雑で、車対人の事故が多いことが問題とされており、ブロックに対して斜めに走る道を広場にすることで安全性が上がり、また、にぎわいを創出しています。

こうした「公共空間化」はどのようにして起こっていったのでしょう?

 

2:「公共空間の大転換」のポイント
—戦略と戦術 / 公民連携(ppp)

NYにおける公共空間の「大転換」のポイントとなったひとつが、ブルームバーグ市政によるオリンピック2012招致運動(1997-2005)。結局はロンドンでの開催となった2012年のオリンピックですが、それ向けた計画「NYC2012」の実施が、市全体にわたって地域を活性化し、長らく放置されていた工業地帯への新たな公共投資、民間投資を呼び起こしました。

 

オリンピック招致の際に提案された都市プランについての説明
オリンピック招致の際に提案された都市プランについての説明

 

そしてもうひとつが、プレイスメイキング実験。「Lighter, Quicker, Cheaper(簡単、素早く、安価に)をモットーに広場化する実験を行いました。「BID(Business Inprovement District)」と呼ばれる地元商業者組織の依頼により、中間支援組織「プロジェクト・フォー・パブリックスペース」が調査・提案・実施。

ここで注目すべきは、こうした「戦略」と「戦術」という関係性です。

 

スクリーンショット 2017-02-04 16.58.54

 

その一端を担う、先にも触れたBIDとは、自治体の一種である特別区のうち、一定の地区内の資産所有者、事業者が集客力・売り上げ向上を目的として負担金を拠出して運営する組織。 治安維持、美化、マーケティング活動など資産価値向上のための取り組みを行います。

広場化された場所でのスポンサーショップ、商業イベント等による利益は、広場で行われるプログラムや設置されるファニチャーに使用されています。

こうした動きとともに、ガバナンスモデルの変化がみてとれます。
・自然保護団体やBIDによる公民連携(PPP)の勃興と増殖
・特定の地域、場所を活動対象とした組織のみならず、公共空間全般のパートナーシップ、ネットワーク型の組織の存在

これらの「ポイント」が整理され、次に事例紹介へと進んでいきます。

 

3:「公共空間の大転換」の事例
—歩行者軸を作る
—ブロードウェイの歩行者空間化
—広場を戦略・戦術的に配置する
—ニューヨークの広場プログラム

こうした官民が連携しながら公共空間を生み出す「大転換」の事例として、各地域に広場を戦略的・戦術的に配置した「ニューヨーク市広場プログラム」と「タイムズ・スクエア」のプロジェクトが紹介されました。

ここでの組織図はこんな感じ。
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鍵となる「タイムズ・スクエア・アライアンス(TSA)」は、地区内に進出する企業や不動産所有者を構成員として1992年に設立されたBID。当初は街路の清掃やセキュリティパトロール、街路灯整備を行っていたそうですが、1990年代末以降、交通混雑や歩行者の安全確保のため、いわゆる「蝶ネクタイ」部分【どこのことかは中島さんによる論文「ニューヨーク市タイムズ・スクエアの広場化プロセス」をご参照ください】の物的環境改善も手がけ始め、現在ではさまざまなアートプログラムの実施やキオスク経営などを通じて、タイムズ・スクエア広場の運営を手がけています。
http://www.timessquarenyc.org/index.aspx

そんなTSAのポリシーは、「素晴らしい公共空間をつくる」ということ。長年の経験から彼らがつくりだした「TWENTY PRINCIPLES」の最初の3つは、こんな風になっています。

 

1:良いデザイン
デザインだけで成し遂げたわけではないが、良いデザインはその場と周囲のコミュニティの野心と核心の表現において本質的であった。
2:良いマネジメント
ルールや規則、清潔さ、安全、秩序の面倒な詳細さと、適度なカオスや偶然性とのバランスをとることができるようになった。このバランスを失えば、どんなに魅力的であっても、その場所性は失われる。
3:クリエイティブで一貫したプログラム
公共空間に命を吹き込む、その空間の資産をそこで起きていることに反映させ、継続と驚きを通じてアイデンティティとオーディエンスを獲得する。

 

導き出された「20の原則」
導き出された「20の原則」

 

タイムズ・スクエアの事例における「調査」から「社会実験」への流れとして、こんな動きがありました。

集中ワークショップ(2003年)
TSAが「デザイン・トラスト・フォー・パブリックスペース(DTPS)」に依頼し、さまざまな専門家やステークホルダーを集めた集中ワークショップを開催しました。(レポートの一部が見られます

観察調査(2006年〜)
TSAが「プロジェクト・フォー・パブリックスペース(PPS)」に依頼し、より詳細な状況調査を実施(コマ撮りフィルム分析、活動マッピング、追跡調査、ユーザー調査)しました。

仮設| ブロードウェイ・ブールバール(市交通局+3つのBID 2008年)
簡易なしかけによる広場化(マーキング、サイン、プランター)、一部の自動車レーンの削減による広場創出(フラットアイアン)を行いました。

社会実験| 「グリーンライト・フォー・ミッドタウン」 (2009年5月〜)
目的はタイムズ・スクエアやヘラルド・スクエア付近での交通安全性の確保、そして「世界水準の街路」の実現。29丁目から57丁目までのブロードウェイから自動車が完全に排除されました。

 

みなさん真剣です
みなさん真剣にお話を聞いています

 

2010年1月の交通局による社会実験のレポート公表から、翌月には「恒久広場化」が宣言されます。目的は、極度の混雑や高い事故率の改善と、「世界水準の街路」の実現。結果的に南北、東西方向とも移動速度が向上し、自動車ドライバー・乗客の傷害事故は63%減少、歩行者の傷害事故も35%減少。タイムズ・スクエアで車道を歩く人は80%も減少した、とされています。

こうした取り組みの背景に、あるエリアがよくなるには10つの魅力的な点が重なることが必要とされた「POWERS OF 10+」という考え方があります。他の場所にも「蝶ネクタイ」のエリアがあり、タイムズ・スクエアのような変化を連ねていき、都市構造そのものの変革が計画されているのです。

 



トークセッション&質疑応答

後半、藤村龍至さんのモデレーションでのトークセッションは、これまでのおとがわプロジェクトの整理からスタートしました。印象的だったのが、ハイラインを動かした二人の若者の姿が、岡崎市におけるNPOりたの動きと重なる、というご指摘。官民の間に入っていた非営利組織の可能的なプレイヤーとしてりたが当てはまるのでは、という想定も興味深かったです。

 

モデレーターをつとめられた建築家藤村龍至さん
モデレーターをつとめられた建築家藤村龍至さん

 

それ以外にも、「NYがうまくいった理由は?」という質問に、中島さんは「短時間の実行力だと思います。また、プロセスや仕組みの強さ」と答えます。前市長ブルームバーグ市長は州知事と関係があり交渉が上手だったことも重要。NYの場合、調査は地域運営組織のBIDや中間にある立場の専門グループによってできるが、それを実行するには行政の力が必要です。市長がうまく行政とやりとりできたことも成功した理由の一つでは、と中島さんは語ります。

「NYの事例は商業地でのプロジェクトだなという印象をもった」という観客には、「にぎわい=商業 だけでなく、人々が生き生きと健康に暮らせることも大切ではないでしょうか。まちづくりはにぎわいだけでは語れないと思います。」というご指摘が。

 

最後に投影されたスライド
最後に投影されたスライド

 

最後にあったのが、先にも触れた「TWENTY PRINCIPLES」のような、ストリートデザインする際のガイドはどのようにつくるのでしょう?という質問。

対する中島さんからの回答は、「ガイドというものは初めはなくて、やりながら結果としてできていった」というもの。その場所の個性をとらえることが必要というメッセージも。「岡崎には石川栄耀が指摘したような道が広いという戦災復興ならではの独特な都市空間があります。空間のもっている特性を観察し発掘すること、デザインと観察は表裏一体だと考えています。」という指摘をいただきました。

 

小さな規模から「戦術」を打ち立て、それを「戦略」へと結びつけていくこと。岡崎でこれから展開していく取り組みのひとつひとつに必要な視点であり態度でもあると強く感じます。

 

記事作成協力、図作成:若山夏実

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