おとがわプロジェクト

よりよいまちへの「引き継ぎ」とその「架け橋」を

パネルディスカッションに臨む4名
2年間を振り返る 乙川リバーフロント地区まちづくり まちなか未来戦略フォーラム「私たちのQURUWA戦略」レポート

2017年3月21日、岡崎市図書館交流プラザ・りぶらホールにて、「私たちのQURUWA戦略」フォーラムが開催されました。

これまでにさまざまな場面でおとがわプロジェクトに参加してきた方々が多数参加していたフォーラム
これまでにさまざまな場面でおとがわプロジェクトに参加してきた方々が多数参加していたフォーラム

 

 

数十年間で暮らす人も働く人も遊ぶ人も3分の2以下に

フォーラムの第1部では、岡崎まち育てセンター・りたの天野裕さんより、おとがわプロジェクトの背景や現状について説明がありました。

冒頭から衝撃的な数字が発表されます。乙川リバーフロント地区(以下、RFエリア)では、この数十年間に暮らす人が3分の2(3,400人減少)に、働く人も3分の2(4,734人減)になっているようです。当然、働く人が減ってしまうことで、事業所数は3分の2(671軒減)、商店数も4分の1(587軒減)となっているようです。岡崎市全体では人口は増加傾向ですが、RFエリアを訪れる人も遊ぶ人も減少していることがわかります。

 

おとがわプロジェクト=大きなリノベーション+小さなリノベーション

こうした事態を受けおとがわプロジェクトでは、「小さなリノベーション」として、民間の遊休不動産を活用した魅力的な目的地づくりに取り組んでいます。すでに籠田公園周辺には、第1回リノベーションスクールから生まれたwagamama houseのようなお店ができています。昨年秋に実施された第2回リノベーションスクールでは、ゲストハウスやラーメン屋台などの提案がなされ、すでに実施に向けた動きが行われているようです。

こうした民間からの小さなリノベーションの動きに平行して、岡崎市は公園や河川空間などの公共空間を再整備する「大きなリノベーション」に着手しています。昨年に殿橋周辺の河川敷で開催されたおとがワ!ンダーランドもそのひとつ。乙川の活用を通じて、街を魅力的にする仕組みについて社会実験を行いました。また、籠田公園から中央緑道、人道橋の利活用を市民が主体的に考えるQURUWA FUTURE VISONでは、公園でウェディングをしたい、木育ワークショップをしたい、などさまざまな案が出ました。

つまり、おとがわプロジェクトとは、民間主導の小さなリノベーションと公共投資による大きなリノベーションによって構成されていると言えるのです。大小のリノベーションを通じてRFエリアの価値を高め、民間投資を誘発。市民と行政が手を取り合い、持続可能な都市経営を実現することに向けて動いています。

 

5つのエリアの未来を考えたトレジャーハンティング

そして、2月18日、19日に開催されたまちのトレジャーハンティング@岡崎では、「都市戦略をぶちかませ」を合言葉に、RFエリアを〈駅前・セントラルアベニュー、旧東海道・六供、りぶら、伊賀川・板屋、乙川〉の5つに分けて、市民と専門家が各エリアで「本当に起こるかもしれない」多様な未来の暮らし方を模索し、提案しました。

 

各エリアでの多様な暮らしぶりや関わり方が提案されたトレハン
各エリアでの多様な暮らしぶりや関わり方が提案されたトレハン

 

 

行政頼りの市民から自らやる市民になれるか

こうした成果を踏まえ、第2部では、おとがわプロジェクトのリノベーションまちづくりプロデューサーの清水義次さん、かわまちづくりアドバイザーの泉英明さん、内田市長によるパネルディスカッションが行われました。さっそく、おとがわプロジェクトのデザインコーディネーターであり、パネルディスカッションの進行役を務める藤村龍至さんが、内田市長にこれまでの取り組みをどう捉えているのか訪ねられました。

内田市長「これまでは行政にあれが欲しい、これをやってほしいという要望が多かったが、トレハンのように、市民から自分がこれを実現したいという能動的な意見が出てきたことに驚きました。岡崎市もおとがワ!ンダーランドなど地域の固有資源を活用した社会実験のなかで提案の一部を後押ししています。人道橋なども含め、公共空間活用の取り組みは国にも注目されており、国土交通省から何度も岡崎市へ視察に訪れているなど、活動の意義を感じています。」

RFエリアで自分が何をできるのか、何をしたいのか。専門家たちからワークショップで問われ続け参加した市民たちは、自分ごととして主体的に参加する方法を模索しているようです。

次いで、おとがワ!ンダーランドの担当でもあり、河川空間の利活用に取り組んできた泉さんは、岡崎市で事業を営む人びとも徐々にまちとの関わり方が見えてきたことを指摘します。

泉「これまでの都市計画はつくることを重視していたのに対して、QURUWA戦略は更新しながら使うことを重視しています。実験的な取り組みを2年かけて行う中で、事業者も出店するための具体的な条件が見えだしています。それに対して行政が答えるのかどうか、対話の道筋が見えてきています。」

 

パネルディスカッションに臨む4名
パネルディスカッションに臨む4名

 

ポイントは行政と民間それぞれの役割を重ね合わせること

街を使いながら更新をしていくQURUWA戦略を実施するにあたり、行政の間に立つ人の役割の重要さを清水さんは指摘します。

清水「民間の動きを捉えて行政が参加する、変わりつつある行政と民間それぞれの役割をしっかり重ね合わせることがQURUWA戦略の特徴です。この時に活躍するのが、パブリックマインドを持った市民です。
江戸時代に行われていた家守という仕組みでは、地主に変わって地代の回収や店子の斡旋など家守人が土地や家屋を管理していました。約60
万人の人口に対して約2万人程度の家守が役人に代わって街を守ってきたと言われています。これをリノベーションまちづくりに応用したのが現代版家守、活躍するのはパブリックマインドを持ち、地域に貢献する重要な人々です。
QURUWA
戦略でも責任を持つ市民の活躍が期待されています。公共投資と持続的に回収する仕組みにするには、彼らの存在が非常に重要です。QURUWA戦略を公民連携基本計画としてまとめていくことが求められていますね。」

家守という仕組みは江戸時代から実践されており、現代版に置き換えたのがリノベーションまちづくりだったんですね。そして、家守などの公益的な活動を行う民間人が行政と民間を繋いできたことがわかりました。しかし、こうしたリノベーションまちづくりは民間の施設にだけ適応可能というわけではないようです。

 

RFエリアが持つ広い受益地のメリット

清水さんも深く関わる岩手県紫波町の公民連携複合施設「オガール紫波」では、民間と行政が手を組んだ体制、市民ニーズを反映した持続的な経営戦略、投資と回収をセットにした仕組みから注目を集めています。

もともと雪捨場だった敷地を含めた10.7haを公民連携手法で整備。まちづくり会社が実施する市民参加のワークショップを通じて利用者のニーズを汲み取りました。ここでわかったニーズを反映した事業者を選定し、銀行などから投資や融資を誘発します。紫波町も開発費用や運営費用を事業主の賃料からきちんと回収する仕組みとなっている点が、建てっぱなしの再開発とは大きく異なります。

また、RFエリアは約137ha(2017年3月21日時点)。額田地区も受益地に含めると、その可能性はオガール紫波以上だと清水さんは強調します。

江戸時代の家守を現代に適応させた公民連携の事例としてオガール紫波を紹介する清水さん
江戸時代の家守を現代に適応させた公民連携の事例としてオガール紫波を紹介する清水さん

 

活用すべきはRFエリアの約半分にもなる公共空間と公共施設

RFエリアは約137haという広い範囲ですが、なんとその約半分は河川や公園、更には道路といった公共空間が占めているようです。さらに、年間約140万人も訪れるフォーラム会場の図書館交流プラザりぶらも公共施設。この公共施設、公共空間を活用する場づくりが重要なんだと清水さんは指摘します。特にりぶら周辺にある駐車場や道路を公園として活用することで、シビコや伊賀川といった周辺エリアへの波及効果も狙えそうです。

すでに社会実験として乙川河川敷で実施したおとがワ!ンダーランドが示すように、ちょっとしたきっかけで日常的な親水空間として乙川を捉えることができるのです。普段あまり人がいない乙川に人が集まっていることは、市民にとっても、行政にとっても想像以上の驚きがありました。「伊賀川の河川空間をりぶらの公共空間とともに活用することで、使い方のイメージが市民に広く知れ渡り、賛同が得られるのではないか」と泉さんは言います。

りぶらから伊賀川へ、伊賀川から乙川へとぐるりとRFエリアを周繋げた総距離は約3km。「この線上にある公共空間を小商い事業者で取り囲むと約1,000人。この1,000人を育てるプロジェクトと言えるかもしれない」と話す清水さん。その1,000人がそれぞれ事業を展開していて、さまざまなアクティビティが実現できたらと考えると期待に胸が膨らみます!

この真っ赤に塗られたエリアが公共空間です
この真っ赤に塗られたエリアが公共空間です(2017年3月21日時点)

 

 

ポイントは岡崎らしい河川空間の活用の発見

ただ、もちろん理想ばかり語ってはいられません。藤村さんは世界中で公民連携と公共空間の活用が進んでおり、紋切り型の公民連携プロジェクトの形骸化を指摘します。それを乗り越える鍵は、岡崎らしさをどこに見出すか、ということだと。

清水さんはその答えを、ずばり乙川だと言います。ただし、今のままでは物足りず、橋詰広場の活用などを通じて、人の流れを河川に引き込むことでよりその魅力を知らしめることができると考えているようです。泉さんは、現在建設中の人道橋に注目。「居心地が良い橋の上で、楽しいコンテンツが生まれ育ち、賑わいが生まれ魅力が増すプレイスメイキングができれば、世界に他を見ない風景となるはず」と強調します。内田市長は岡崎らしさのポイントとして、歴史資産と乙川河川空間の活用を挙げます。

 

おとがわプロジェクト3年目への期待

もともとインフラへの再整備から議論が始まったおとがわプロジェクトも、この2年間で賑わい空間の創出やこのまちでの働き方にまで話が広がってきています。さらに3年後には実際にさまざまな空間が立ち上がり、それまでにパブリックマインドを持つ、街を使いこなす人びとが育つ必要があると藤村さんはフォーラムを締めくくります。

これまでおとがわプロジェクトに関わってきた方々が感じているように、それぞれの小さな意識が鼓動を始め、プロジェクトとして動き出し、街としての関わりに広がっていく様子が想像できるようです。次年度の活動にも期待が高まります!

浅野 翔(あさの かける)

浅野 翔(あさの かける)

1987年、兵庫県生まれ。名古屋を拠点に活動するデザインリサーチャー。「デザインリサーチによる社会包摂の実現」を理念に掲げ、福祉や伝統工芸など幅広い分野でデザイン活動を行っている。「未知の課題と可能性を拓く、デザインリサーチ手法」を掲げ、文脈の理解と物語の構築を通した、一貫性のある提案を行う。 2015年の岡崎デザインシャレットをきっかけに、『おとがわプロジェクト』に参加する。

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